もしも、もしも、ね。
「好きじゃないの?」
佐久間君が、目をぱちくりさせてこっちを見る。
その「心底驚きました」って表情が、なんだか可愛かった。
思わず小さく笑いながら頷くと、大きくなった瞳がまた大きくなる。
そして、急に縦の拳と手のひらを打った。
ん?何に納得したの?
「そっか、好きじゃなくって愛してるってヤ―――」
「刺すよ?」
佐久間君の言わんとすることが分かった私は遮って先回り。
自分でも驚くほどの、低くてドスが聞いた声が出た。
当たり前。何度も言ってるけど、私はアイツが き・ら・い・な・の!!
彼は顔を引きつらせるとブンブン首を横に振った。
「そっかぁ。」
「何よ。」
「桜野はツンデレだ―――」
「それ以上言うと、君のお腹に風穴空くよ。」
「・・・空くの?」
「・・・試してみる?」
親指と人差し指だけを伸ばした右手を佐久間君のお腹に向ける。
彼は「顔に似合わず物騒なこと言うのな。」なんて言いながら大口を開けて笑った。
ま、刺すのも空けるのも、冗談だけど。
そんなことをしかねないくらい、ありえないってこと。
「ね。」
「ん?」
「桜野って」そこまで佐久間君が言った瞬間、ピンポンパンポーンと放送音が鳴った。
『続きまして、高校二年生による、クラスリレーです。』
―――来た。