クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
部長は先輩社員と仕事の話や車の話を始めてしまって、私が入れる隙がなくなった。
「お酒、補充してもらえるように言ってきます」
席を立つ口実を告げ、特に誰も気に留めないよう静かに宴会場を出た。
深い深いため息をついて、ぼんやりと通路を歩く。途中ですれ違った仲居さんにお酒を頼んで、部屋に戻ろうと角を曲がった。
合間に広がる庭園は、灯篭が優しく辺りを温めている。今にも凍りそうな池も、反射するその光が包み込んでいるみたいだ。
柏原さんに抱かれたらって、随分簡単に言われてしまった。
やっぱりこの歳になって未経験とは、誰も思わないのかもしれない。
いくら私が地味でも、さすがに……。
立ち止まって、すーっと息を吸う。
山間の空気はとても澄んでいて、このところ淀みきっていた心が洗われる気がした。