クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
「そんなこともなかったですよ?……ご存じのとおり」
日が経つにつれて、柏原さんとの思い出は風化してきている。時々、会社で顔を合わせると気まずいけれど、私ばかりが心を病んでいるのは割に合わないなと思うようになった。
「……っ?!」
肩にあった手で強引に寄せられた顔は、部長に一気に近づいていく。
突然の出来事に心臓が動き方を忘れたみたいで、少し遅れて鼓動を刻みだす。だけど、大音量ですごくうるさくて、耳障りなほどだ。
「結衣、気づいてた?」
「な、何がですか……」
額が触れる寸前の近距離に、社員旅行の夜を思い出す。
あの時は暗い中でキスをされたけれど、これ以上の近さだったのかと知って、やっぱり部屋にこもって作業すればよかったと後悔した。