クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
「……っ、どうしたんですか?!」
不意に後ろから抱きしめられて、踏み出した足が止まった。
首元に感じる彼の温もりが、じわじわ押し寄せる。
ウールコートの上からぎゅっと包み込む彼の腕は、決して強くないのに振りほどけなかった。
少しも、嫌だと思わないから。
「早く行けよ」
「……だったら、離してください」
私の鼓動が何度か鳴った頃、やっと解放されて振り向いた。
「気をつけてな」
まともに彼の顔を見ることを許されず、力づくで玄関の外へ押し出されてしまった。
な、なんだったの、今のは。
言いたいことがあるなら、ハッキリ言ってくれて構わないのに。
鍵だけではなく、ロックまでされてしまった音がしたので、慌ててインターホンで彼を呼び出そうと試みたけれど、応答はない。
絶対に絶対にいるのに、完全無視。
だけど、振り向いた瞬間で僅かに見た彼の表情は、なぜか怒っているようだった。