クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ

「……っ、どうしたんですか?!」

 不意に後ろから抱きしめられて、踏み出した足が止まった。

 首元に感じる彼の温もりが、じわじわ押し寄せる。
 ウールコートの上からぎゅっと包み込む彼の腕は、決して強くないのに振りほどけなかった。

 少しも、嫌だと思わないから。



「早く行けよ」

「……だったら、離してください」

 私の鼓動が何度か鳴った頃、やっと解放されて振り向いた。


「気をつけてな」

 まともに彼の顔を見ることを許されず、力づくで玄関の外へ押し出されてしまった。



 な、なんだったの、今のは。

 言いたいことがあるなら、ハッキリ言ってくれて構わないのに。


 鍵だけではなく、ロックまでされてしまった音がしたので、慌ててインターホンで彼を呼び出そうと試みたけれど、応答はない。
 絶対に絶対にいるのに、完全無視。


 だけど、振り向いた瞬間で僅かに見た彼の表情は、なぜか怒っているようだった。


< 186 / 361 >

この作品をシェア

pagetop