クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ

 いざ、タワーマンションの前まで帰ってきて、愚かだったのではないかと冷静になってしまった。


 いくらときめいても、もしかしたら部長のことが好きかもしれないって自分の気持ちに気付いてしまっても、すべては仕事のためなのだから。


 昼間、リビングでされた優しいキスが蘇って、額に触れる。
 早く行けというわりに、離してくれなかった腕の感触がまだ鮮やかだ。


 本当に仕事のためなの?


 私が企画を進められるようになるために、こうしてくれているだけ?



 40階でエレベーターが口を開ければ、目の前は硝子張りの通路が左右に延びる。

 見下ろした街のどこかに、さっきまで一緒にいた友達や新しくできた女友達、羽野さんたちがいる。一緒に楽しんできてもよかったのに――。


 通路を曲がり、4桁の部屋番号を確認してからインターホンを押した。


 少し待っても応答はなく、合鍵で解錠するとロックはされていなかった。
 出掛けのあの出来事が、脳裏をよぎる。


 あんな怒った顔の部長は、初めて見た。


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