クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ

 真っ暗で広いリビングに、ぽつんと私だけがいる。

 寂しく思うなんて、この部屋に愛着が湧いてしまっているからだろう。



「部長……いま、どこにいるんですか」

 思ったままを声に出しながらメッセージに変えて、送信した。



 部長はきっと恋愛に慣れているから、私がようやく気づいたこの気持ちなんて、とうにお見通しかもしれない。
 だからあんなふうに構ってきたり、冷たくしたり……そうすれば、部長が言っていた“リア充”を手っ取り早く体感できるもの。



 昼間、部長が寝転んでいたソファに、同じように横になった。


 カーテンの隙間から見える空は、星もない。
 高層ビルの照明と、街を彩っているイルミネーションのせいでいつもより少し明るく感じるだけ。


 好きと気づいてしまったばかりの気持ちを抱えて、好きな人の部屋で1人。

 まるで罰ゲームみたいでツラい。


 香りが、生活の雰囲気が、彼の存在が。

 形のないモノたちが私を包み込むから、無性に会いたくてたまらないのに。



< 193 / 361 >

この作品をシェア

pagetop