クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
扉が開いて、鍵を棚上のプレートに置いた金属音がした。
反射的に私は身体を起こして、泣く寸前だった目元を指先でそっと抑える。
「帰ってたなら、電気くらい点けろ」
「すみません……おかえりなさい」
「ん」
髪をかきあげ、「あー寒かった」と呟きながら、脱いだダウンコートを書斎にしまいに行くその背中を見送る。
好きだなぁ。
素っ気ない短い返事も、日常のなにげない仕草も。
さっきまでひんやりとしていた空間が、途端に温まって、喜びの色に染まっていくみたいだ。
戻りついでに壁にあるスイッチを押すことなく、部長は無表情で私を見つめている。
「これ、買ってきたから」
部長の手には、真四角の箱。
ダイニングテーブルに置かれたそれを見つめている私を、部長は手招きして呼び寄せた。