クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
――どうか気づかれませんように。
それを願ってやまない私は、焦燥感で全身に爆音を轟かせる。
柏原さんのさらりとした前髪が額に触れた時、諦めるよりも早く唇が重ねられた。
彼にとっては、初めて会った人。
それなのにこんな簡単にキスをするなんて…………最低だ。
やわらかな感触にも、耳まで覆うその手の温もりにも気持ちがなびくことはない。
地上階に到着したと控えめなアナウンスが聞こえ、柏原さんの肩を強く押した。
「また会うことがあれば、お話しましょう」
キスくらいで動揺しない。
好きでもない男にされたなら尚更だ。
連絡先を交換することもなかったし、職場も明かさなかった。
本当の私で会うことは、2度とないでしょう。
そう心で呟きながら、作り慣れた微笑みを彼に投げてマンションを出た。