クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ


「千堂部長、荷物運びお手伝いします」

「あぁ、ありがとう。助かるよ」

 後輩男子が率先して手伝いを始めた。


 4月を前に、商品企画部のデスクを沙良さんに譲った彼は、整理した荷物を段ボールに入れて運び出している。
 まだ籍はあるものの、経営企画室の業務が大半を占めるようになってきたからだ。



「この紙袋もですか?」

「ん?」

 不意に、私が好いていた彼の短い返事を聞かされて、胸の奥がざわつく。


 彼にしてみれば何てことないことでも、一々が思い出になってしまうようになった。



 柏原さんに失恋して、ダメダメの私になっていた時も。

 温泉旅行で彼が逃げ込んできた夜も。


 初めてキスをされたあの瞬間だって、今も消えようとしない。



 一緒に過ごした毎日は、まるでアルバムに閉じた写真のようだ。


 ソファで並んでテレビを観ていたときも、私が作った食事を気に入ってくれたことも。

 毎夜、温もりを持ち寄って眠りについていた秘密も……。



 彼が振り返った時、私の想いを詰めたチョコレートの缶が、段ボールから落ちた。


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