クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ
「失礼します……あの、千堂部長さまでいらっしゃいますか」
蚊の鳴くような声で、いつの間にか現れた日陰女に、思わずぎょっとして視線を向けた。
集中して資料作成に勤しんでいた俺の隣で、頼まれた社内便を持ってきたと呟く。
「ありがとう。忙しいのにわざわざ来てくれて助かりました」
「いえ……お急ぎの案件でしたら、この方がいいかと思いまして……勝手な判断をしてしまい、申し訳ありませんでした」
何も悪いことなんてしてないのに、控えめ過ぎるほどの態度に好感を持った。
褒められて調子に乗る社員はたくさん見てきたけれど、この子はどうしたら伸びるのかって、部下を持つようになった今だから、職業病みたいに考えてしまう。
「あのっ……」
「ん?」
「私に何かご用でしょうか?失礼がありましたら、お詫びいたします」
まじまじと見つめてしまったから、帰るタイミングを奪ってしまっていたことに気づく。
「大丈夫ですよ。本当にありがとう。頑張ってくださいね、瀬織さん」
首から提げたIDを確認するなり名前を口にしただけで、恥ずかしそうにする反応が可愛いと思った。