クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ

「申し訳ないなんて、言わないでください」

「ん?どうして?」

 ハンドルを握る手は、細いけれどしっかりとした長い指が色っぽい。その手に触れられたのだと思ったら、途端に言葉が詰まってしまった。



「……言っておきますが、隣に乗せるのは瀬織さんが初めてですから」

「えっ!?」

「あぁ、社内でって意味で」

「……ですよねー、驚かせないでください」

 ごめんと砕けて謝る部長は車を回して出入口まで来ると、定期駐車のカードを機械に挿しいれた。



「瀬織さんは、休みの日は何してるの?ドライブとか?」

「私は免許を持っていないので」

「へぇ、めずらしいね。じゃあ、素敵な人の隣に乗ったり?」

「……そ、そうですね。そんな感じですかね」


 素敵な人がいたら、こんな生活はしていない。
 週末のパーティーだって参加する機会は減るだろうし、いわゆるリア充ならこういう一々の出来事に動揺したりしないはずで……。


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