クールな上司とトキメキ新婚!?ライフ

「地味なのは見せかけなんだから、そんなに徹底しなくても」

 電車に乗って、ひしめき合う車内で身体がぶつかる。
 彼の胸元から見上げるほかない与えられた空間の窮屈さが、幸せに感じた。


「徹底しなくちゃ、意味がないんです」

「どうして?別に普通にしててもいいと思うよ。結衣ちゃんは結衣ちゃんなんだから」

「面倒だからです。妬みとかそういうのが」

 あぁ、と納得した声。柏原さんだってそういう経験は大いにあるだろう。だからこそ、秒とかからず理解してくれたのだ。

 返してもらった眼鏡をバッグにしまい、顔にかかっていた髪をかきあげる。
 服装はオフィスカジュアル、ヒールは低め。


 それだけで、どういうわけか周りの男性が視線をよこす。



「そういうことか……あの夜と同じだね、どこにいたって」

 柏原さんと出くわしたパーティーの夜と同じ色香を含んだ視線が日常的であればあるほど、同性の妬みになるのだ。


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