【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
「あほか……」
そんな私の逡巡に気づいたように
拓海がしかたねぇな、と言う顔をして
私の瞳を覗き込む。
「……これからお前とは、
大事な話があるから寝てんじゃねぇぞ?」
ニヤリと一瞬悪戯っぽく笑って、
私のおでこを指先で弾く。

話って……なんだろう?
それに彼の部屋で二人きりになるのは、
この前のキスした時以来だ。
ふとそんなことを思い出して、体温が上昇する。

「……ん、わかった。待ってる」
「鍵、不用心だから、閉めておけよ」
そう私が言うと、拓海と結衣さんが席を立つ。

「ねえ、佳代ちゃん一人で帰して大丈夫なの?」
心配そうに尋ねる結衣さんに、
「拓海の部屋、この店の裏なんです」
私が答えると、彼女は納得したように笑みを浮かべた。


そして私は彼女に別れを告げて、
彼の部屋の鍵を持って、
そのまま店の裏手に出て、階段を上る。
私は通い慣れたその階段を上がって、彼の部屋に入る。

一人っきりで彼の部屋に入るのは初めてだから、
すこしドキドキしながら、
彼のしぐさを真似して、電灯をつける。

拓海の部屋は、相変わらず物が少なくて、
片付いていて、私は所在無げに、
そっと、彼の部屋の椅子に腰かける。

なんだかドキドキが激しくて、、
心臓がおかしくなってしまいそうだった。

彼は私に何を話してくれるのか、
期待と不安とで胸がどうにかなってしまいそう。

手持ち無沙汰で、携帯を取り出して、
慌てて麻生先生にメールを送ろうとする。

……でも、なんて送ったらいいんだろう?

少し書いては悩んで、もう一度悩んで。

ようやく送ったのはこんな内容だった。

『やっぱり来ていたのは、例の彼女でした。
拓海に、好きな人ができたって言う報告を
しに来たみたい。
だから、麻生先生が言うように、
心配しなくても大丈夫だったみたいです。
これから少し、拓海と二人で話をしてきます。
ありがとうございました(^-^)』

麻生先生に送ると待っていたように
即、返信があった。

『良かったね。でも話になる前に、
襲われないようにね( ´艸`)』

読んだ瞬間、顔がかぁっと熱くなる。
携帯を握りしめたまま、思わず指先が震える。

『そんなことないです』
とメールを打とうと思った瞬間、
呼び鈴を押す音がして、

「佳代……?」
彼の声が聞こえる。
慌てて、玄関の戸を開けた。
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