【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
エピローグ
暗い部屋で、身を起こして煙草を取り出す。
佳代は、あどけない表情に笑みを浮かべて眠っている。

その傷一つない白い背中を見ていて、
ふと、結衣のことを思い出す。

白い背中に一筋走った傷跡。
あれを抱えて生きていくのかと、
相手の男はどんな男なのか、
アイツの傷すら受け入れて、
支えてやれるような男なのかと、
全く気にならないと言ったら嘘になる。

妙な男でないことを心から祈ってる。
まあ、慎重なアイツの事だから、
俺よりいいと思えたオトコなら、
まあ、間違いないだろうとは思うけどな……。

そう思いながら、ほんの少し心のどこかで、
チリチリとするような妬ける感覚がある。

ふっと思い出して苦笑する。

「男の恋は名前を付けて保存、
女の恋は、上書き保存」
と、依然友人が言っていた言葉だ。
きっと俺は、
「結衣」というフォルダーを作って、そこに保存して。
普段はその存在も忘れていくのだろうと思う。
結衣はきっと、俺の名前ごと、上書き保存して
新しい男とのフォルダーを重ねていくのだろう。

まあ、結衣のことは、その新しい男に任せて、
俺は今夜、自らのものにした女を、
幸せにすることだけ考えていたらいい。

春になったら、コイツを俺の故郷に連れて行こう。
なんだかんだと、心配かけた両親にも
コイツを合わせてやりたい。
そして、故郷の風景を一緒に見たい。


ふとメールが届いていたのに気づいて、
携帯を枕元から引っ張り出す。

そこには麻生先生からのメールが届いていて、

「佳代ちゃん、初めてだからね?
大事にしてあげてね??( ̄▽+ ̄*)」

……思わず携帯を放り投げそうになった。
間違っても、コイツとどうこうしなくてよかった。
散々誘われてたけどな……。
とはいえ、結局は麻生先生にしてやられた感はタップリだ。

南君まで巻き込んで、結局今日のここまで、
全部あいつらのシナリオ通りだった気もしないでもない。

ま、きっかけを作ってもらった、と言えばそうなんだろうけどな。

しかし、『穂のか』であれだけ派手にやったら、
あっという間に噂になるだろうな……
と、ふと気が重くなる。

ああそうだ。
他から話が行く前に、隼大にだけは報告しないとな。
多分アイツは喜んでくれるだろうと思う。

「拓海、佳代を嫁にしろよ。
意外と料理もできるし、おススメだけどなあ……」
そんな風に冗談めかして隼大はよく言っていた。
まあ、アイツが弟になるのはそれはそれで大歓迎だしな。

とりあえず流れでうちに泊まらせてしまった事だし。
アイツにも一本メールを送っておくことにした。
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