【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
「……随分待たせたけどな
その分これからずっと大事にしたいって、
そう思っているんだぞ。

…………やっぱり、俺はお前が好きだ。
……世界中の誰よりも……」

瞬間、ぽろり、と彼女の瞳から涙が零れ堕ちた。
ゆっくり瞬きをして、
潤んだ瞳で俺を見つめる。

「ずっと、俺はお前が欲しかったんだと思う……。
だから、確信犯的に、お前を翻弄し続けたんだろう……」

悪かったな、でもどうしてもお前が欲しかったんだ。
そう囁くと、
彼女がちょっと困ったような笑みを浮かべる。

瞬間彼女の体から力がすっと抜けて、
苦痛を訴えていた彼女の中で、
納まるべきところに納まる。

「……ズルイ拓海も、拓海だから……
拓海の全部が好き」
「……ずっと、ずっと拓海の事、待ってた」

ふっと互いに笑みが浮いて、
引き寄せられるように
キスをする。

「……佳代……」
彼女の名を呼ぶ自らの声が、
甘くてたまらないほど、柔らかい声で、

「……お前を愛してる」
らしくない言葉でも、
コイツがそれで少しでも幸せになれるなら、

「ん。拓海、私も愛してる……」
ぽろぽろと涙を零しながら彼女が囁く。

息が詰まりそうなほどの心地よさに、
呼吸を乱す。

痛みがまだあるのだろう。
そのたびにキスを落して、
出来る限り優しく頬を、髪を撫ぜる。

緩やかな動きに、徐々に彼女の表情が穏やかになる。
そのうちに、ゆっくりと、溶けるような甘い表情と、
切ない吐息が漏れ始める。

その表情に見とれながら、
俺は、自らの高まりを予感した。

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