【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫
番外編 episode:asoh
明け方にふと目が覚めて、
時間を確認しようと携帯に手を伸ばす。

そこには、深夜に届いたメールが一本。

開けてみると、
それは昨日就寝前に送ったメールの返信で、

昨日、ようやく、欲しくてたまらなかった彼女を
手に入れた、浮かれた男からのメールに、苦笑を漏らす。

「……佳代ちゃん、結局襲われちゃったんだ……」
メールを一瞥して、ため息をひとつ漏らす。

本当なら、彼をもう少し焦らしてやったらよかったのに。
もっともっと、引きつけて、引っ掻き回して、
繕える余裕なんて微塵もなくしてから、
彼のモノになってもよかったのに……。
なんて、彼女には出来ない駆け引きかもしれないな。

「まあ、最初っから、
単なるやせ我慢だったからな、センセ……」

うん、まあ、彼の性格から言って、
きっとぎりぎりまで我慢していたんだろうし。
ようやく彼の自尊心を壊すことなく、
欲しいものを手に入れられたって……

「理性の限界、突破しちゃったわけよね?」

まあ、それなりに女性経験もありそうだし、
初めての佳代ちゃん相手でも、
ちゃんと彼女を傷つけないように大事に扱ったんでしょ?
まあ、この返信メールは、
これ以上あの二人にちょっかいかけるなっていう、
けん制の意味があるのも、もちろんわかってる。

「……初めてかあ……」

思わずベッドの上で座り込んで、
右斜め上を見上げながら、ため息をつく。

…………どんだけ前の話だっけ?

一瞬真面目に年数を考えようかと思って、
馬鹿らしくなって、指折り掛けた指先を止める。

「……まあ、いいよね、
あれだけずっと片思いしてたら、
その瞬間はたまらなく幸せよね?」

そう呟いて。
「……ったく、いいなあ……」
思わずため息が漏れる。
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