マイノリティーな彼との恋愛法


渚はなかなか電話に出ず、切ろうかと思ったところでようやく繋がった。
明るい声の彼女らしい応答か聞こえた。


『はいはーいっ。ひばりー?どうしたー?』

「あ、お疲れ〜。もう仕事終わってる?今駅前のカフェにいたから、良かったらどこかに飲みに行かない?」


結局、神宮寺くんに自分から連絡する勇気なんて出るわけもなく、居心地がよくて話を聞いてくれる渚へ泣きつく私。
なんだかそれも悲しい。

ところが、追い打ちをかけるように電話の向こうから男の人の声がした。


『誰?友達?』

『あっ、白沢さん、友達です。ひばりです〜』


短いやりとりだけど、すぐに分かった。
渚はいま、絶賛社内恋愛中の先輩行員のカレと一緒にいるんだと。


「ごめん、邪魔して。また今度誘うね」

『ひばり、ごめん〜!』

「何言ってんの、気にしないで」

『ありがと!またねっ』


ツーツー、という電子音がスマホから聞こえて、一気にテンションが下がった。


いーーーなーーー。
無性に羨ましい。ものすごく羨ましい。
ついでに言うと妬ましい!

こっちは気になる相手に連絡も出来ずにモジモジしてるっていうのに、親友は彼氏とイチャついてるという事実!


風花ちゃんの言葉を思い出した。


『じゃあ春野さんって正真正銘一人ぼっちのアラサーなんですね〜』


ガラス越しに外をうかがうと、週末で賑わう街の中を幾人もの恋人たちが手を繋いだり腕を組んだりして歩いている。

ぐるっと店内を見回す。

店内も同様に、けっこうな割合で男女が見つめ合っている。


『正真正銘一人ぼっち』が頭の中でリフレインする━━━━━。


……………………帰って海外ドラマでも見よ。


重い腰を上げて、大人しく帰ることにした。





< 85 / 168 >

この作品をシェア

pagetop