ケダモノ、148円ナリ
「スポーツカーなんて、日本で乗る意味ないですよ。
 何百キロ出せても、そのスピードで走れるところなんてないんですから。

 せいぜい高速走行の試験場くらいですよ」

 まったく実用的ではないですね、と言うと、
「女ってのはロマンがないな」
と罵られる。

 車は断りもなく、勢いよく走り出した。

 シートベルトはしていたのだが、よろけて、うわっ、とドアをつかむ。

「運転荒いですよっ?」
と訴えると、

「お前がごちゃごちゃうるさいからだ。
 俺は普段は安全運転だ」
ととてもじゃないが、信じられないことを言ってくる。

 だが、しばらくすると、車の速度が落ちてきた。

 ちゃんと法定速度で走っているようだ。

 だから、スポーツカーに乗る意味、あるんだろうかな、と思いながら、ちら、と貴継を見る。

 夜の街を走る貴継の横顔は、ちょっと見惚れてしまうぐらい綺麗だったが。

 ……が。

 お願いです、神様。

 おにいさまに嘘なんてついた私が悪かったですっ。

 この上から目線の悪魔を何処かへ持って帰ってください~っ。

 そう心の中で叫んでいるうちに、車は自宅に着いてしまった。





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