ケダモノ、148円ナリ
 まさか、頭の中が読めたわけではあるまいが、顕人は、
「本当にお前のことが心配だが……」
とまた繰り返す。

「まあ、この春からお前も社会人だし。
 俺も結婚したら、海外に行くしな」

 ええええええっ。
 海外っ!?

 聞いてませんっ!

 明日実の頭の中では、何故か、顕人がもふもふの毛皮のついた服を着て、ピラミッドの前に立ち、現地の妻の肩を抱いて、ニーハオと言っていた。

 相当動転しているらしい、と自分で思った。

「頑張れよ、明日実」
と顕人が自分を見つめる。

「これを」
と顕人は、綺麗に飾られた小さな箱を出してきた。

「就職祝いだ。

 薬指にはつけるなよ。
 男が寄ってこなくなるぞ」

 少し寂しそうに笑って顕人がそれを渡してくる。

「……あ、ありがとうごさいます。
 開けていいですか?」

 うん、と顕人は言う。

 中には可愛いダイヤが三つ並んだ指輪が入っていた。

 なんとなく、こういうシーンを想像していた。
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