ケダモノ、148円ナリ
 まさか。
 おにいさまともあろうお方が、いわゆるできちゃった婚とか?

 そんな間抜けなことをやらかすようには見えないが。

 まあ、おにいさまも男の方だから、うっかりということもあるのだろうか。

 ……あるのか?

 っていうか、うっかりってなんだろうな?

 誰とも付き合ったことのない明日実には、なにをどう、うっかりしたら、子供が出来たり、出来なかったりするのか、いまいちわかってはいなかった。

 そんなことを考えながら、顕人の話を聞き流し、機械的にポトフを口へと運んでいたのだが。

 どうしたことだろう。

 産まれて初めてのことだが、このポトフを食べて、味がしない。

 シェフが味をつけ忘れたのだろうか。

 いや、確かさっきまでついていた。

 何処かからマジシャンが現れて、それっ、とばかりに、私の皿を気づかぬうちに取り替えたのだろうか。

 もしも、顕人に頭の中の中が覗けるのなら、今こそ、
「大丈夫か?」
と言われそうなことを考えていた。
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