ケダモノ、148円ナリ
「カウンタックを見つけて買ってくるくらい」
と言うと、明日実は、

「それはなんか違うような……」

 嬉しかったですが、と言ったあとで、少し考え、

「おにいさまのことが最初に気になったのは、小学生だったおにいさまが庭で転ばれたときです」
と言ってきた。

「颯爽と立ち上がったとか?」

「泣いてらっしゃいました。
 結構長い間ぐずぐずと。

 どんなにおばあさまがなだめられても、痛いからと治療も嫌がられて」

「……駄目じゃないか」

「でも私、いつもは毅然としてらっしゃるおにいさまが、背中を丸めて、膝を抱えてらっしゃった姿に、なんだかきゅんっと来たんです」

 やっぱりか。
 こいつ、弱ってる男に弱いんだな。

 俺はいつでも颯爽としてるから、こいつにとってはイマイチなんだろうな、と明日実が聞いたら、いやいや、と手を振りそうなことを本気で思う。

「じゃあ、俺も今から転ぶから見てろ」

「いや、大人が転んでも……。
 なにやってんでですかと思うだけですが」

 そのとき、沈黙していたのに、なにが、どう決着が着いたのか。

「帰るわ」
と真冬が立ち上がった。
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