ケダモノ、148円ナリ
 




「真冬さん」
と声をかけると、

「ごめんなさいね。
 仕事中に」
と彼女は言ってきた。

「……顕人さんは?」
と視線をそらし、訊いてくるので、

「仕事に行ったと思います。
 おにいさまも貴継さんと一緒で、どんなことがあっても仕事を休まれる方ではないので」
と答える。

 ふと安田課長の姿が頭に浮かんだ。

 虚ろな目で、電車で笑っていた。

 この二人もああいう無茶しそうだな、と思う。

「わかっていたんだけどね。
 あの人の心が私を向いていないのは」

 でも、と顔を上げ、真冬はこちらを見て言った。

「貴女に関しては心配いらないわね。
 小さなときから、顕人さんベッタリだったって聞いてたから心配してたんだけど」

「え、どうして心配いらないんですか?」
と問うと、

「だって、彼氏とラブラブじゃないのー」
と笑う。
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