ケダモノ、148円ナリ
そのあとの週末は静かに過ぎた。
二人でお買い物に行ったり、カウンタックでドライブしたり、クレームブリュレを作ったり。
日曜の夕方、ソファに寝て本を読んでいた貴継が訊いてきた。
「明日の入社式の準備は出来たか、明日実」
「はい。
ばっちりです」
貴継の前のテーブルで、貴継の作ってくれたクレームブリュレを食べながら言うと、
「そうか、ちょっと着てみろ」
と言って笑い、スーツを着させようとする。
「駄目です。
当日のお楽しみです」
「そういうこと言うと、期待するぞ」
と言われ、
「……すみません。
いつも着てるのとそう変わらないスーツです」
と俯いた。
「そうか。
安心したぞ」
と貴継は本を置いて言う。
「ノースリーブだったり、もふもふだったり、とんでもないのを着てくるつもりかと思った」
「そんなわけないじゃないですかっ」
そう言い、ソファで頬杖をついている貴継の腕を叩くと、貴継は笑ってこちらを見る。
その表情が初めて会った頃とは全然違っていて、穏やかで、やさしげに見え、思わず、視線をそらしてしまった。