ケダモノ、148円ナリ
ケダモノを148円で買いました
 



「……やっぱりケダモノじゃないですか」
と言った明日実に、貴継は、

「そうだ。
 お前の意志で買ったんだ」

 明日実、と握った手を持ち上げ、その甲にキスしてくる。

 今、寝ていいと言ったくせに、
「今日はもう逃がさないぞ」
と唇に触れてこようとする。

「そっ、その前に聞かせてくださいっ。
 今日、なにがあったんですか?」
と明日実は彼を手で押しとどめた。

「親父に専務の居る病院に連れていかれて、説得された。
 ……珍しくスーツで来たよ、あのオッサン」

 昔を思い出した、と貴継は言う。

 明日実から手を離し、貴継は腰掛けたベッドの上で、立てた片膝を抱えていた。

 なにかを思い出すような貴継に明日実は思う。

 子どもの貴継が見ていた父の姿は、颯爽としていて格好よかったんだろうな、と。

「……貴方は地位や名誉が欲しかったんじゃないですよね。

 ただ、取り戻したかっただけなんですよね。

 貴方のご家族を」

 クーデター後起こった一家離散が信じられないくらい……。

「大好きだったんですね、ご家族のことが」
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