ケダモノ、148円ナリ
「それではおにいさま、また」
とすぐに仕事の電話がかかって帰ることになった顕人を見送りに、明日実は、その見知らぬ男と外に出る。
男は何故か付き合いよく、話を合わせてついて来てくれた。
タクシーに乗った顕人は窓を開け、男に訊く。
「すまないね。
ゆっくり話をしたかったんだが。
また今度、席をもうけるよ」
急だったから、という顕人に、そうですね、と苦笑しながら思っていた。
「ああ、ところで、慌ただしくて名前も訊けてなかったね。
僕は稲本顕人(いなもと あきひと)」
「天野貴継(あまの たかつぐ)と申します」
と男は言った。
本名かどうかは知らないが。
「天野さん」
そう顕人は確認するようにその名前を繰り返し、じゃあ、また、と言って去って行った。
怒涛の展開に張り詰めていた気が緩み、明日実は、ふう、と息を吐いた。
緊張感から解放された明日実は、男を振り向き、つい、思ったままを口にしていた。
「……誰?」
「そりゃ、俺のセリフだ……」