ケダモノ、148円ナリ
 




「申し訳ございません」
と近くの喫茶店で明日実を頭を下げた。

「ちょうど程よいイケメンが通りかかったので、つい」

「どんな謝り方だ」
とどうやら、本当に貴継という名前だったらしい男が言う。

 まあ、あの店の客だ。

 みな、身なりはきちんとしているし、ぱっと見に問題はないのだが。

 何故だかこの男が最初から目についていたのだ。

 何処かで見たような……と思っていると、
「なんだ?」
と横柄な口調で訊いてくるので、

「何処かでお会いしませんでしたっけね?」
と訊くと、

「覚えていたのか、ケダモノ女」
と貴継は言ってくる。

「去年の春先にタクシー乗り場で一緒になったぞ」

 ええっ? そんな昔の話っ?

「よく覚えてましたね、私」
と言うと、

「覚えてたの俺だろう。
 お前はなんとなく覚えていた、という程度だ。

 お前は、148円でケダモノを買った女だ」
と言ってくる。
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