イジワル副社長と秘密のロマンス
まだ完全に納得できていないような、わだかまりがあるような、そんな顔をしている。
黙ったままお兄さんと見つめ合っていると、隣りの樹君が小さく息を吐く。今度は樹君へと視線が集中する。
「千花は本当にAquaNextを大切に思ってる。だから恋人の傍で働くことになったとしても、中途半端な仕事は絶対しない。俺たちに全力で応えてくれると思ってる」
樹君が私に笑いかけてきた。いつもの笑みとは違う、手と同じ温かさがじわりと伝わってくる。
かけてくれた言葉がとっても嬉しくて、ちょっぴり目頭が熱くなってしまった。
「千花を秘書に選んだのは現社長の意志なんだから、兄さんがその跡を引き継いで俺たちの働きっぷりを見てから、社長として判断すればいい。それからだって遅くないでしょ?」
頑張りたい。彼の期待にちゃんと応えたい。話を無かったことにしないで欲しい。
思いを込めて、改めて私は樹君のお兄さんを見つめた。お兄さんも真剣な顔で見つめ返してくる。
樹君は腕時計で時刻を確認すると、話を切り上げるように「さてと」と一声発した。
「休憩終わり……しっかり会議室片付けておいてよね、三枝さん」