イジワル副社長と秘密のロマンス

そして私ににやりと笑いかけてから、歩き出す。


「兄さんも早く仕事に戻りなよ」


ついでのように、お兄さんにも一言声をかけ、軽く手を振って会議室を出て行った。

“千花”ではなく“三枝さん”と私を呼んだのは、次期副社長という立場である彼なりの一線の引き方なのかもしれない。

私も気持ちを切り替えよう。

樹君のお兄さんに向かって一礼してから、会議室の片付けを再開する。

弟を追うように会議室から出て行く足音を聞きながら、私は力を込めてテーブルを拭いた。



+ + +


宝さんに仕事を教わり、充実した毎日があっという間に過ぎて行く。

月が変わり、二回目の日曜日。私たちはついにこの日を迎えることとなる。

今日、AquaNextに、会長、社長、副社長が新たに誕生する。

そして今、都内某所にある高級ホテル内の宴会場で、三者の就任披露パーティが大々的に行われている。

出席者は300人をゆうに超え、株主や顧客、政界や芸能界などで活躍しているセレブな人々、取引先や提携先の企業の社長などなど、多くの関係者が三人に温かな拍手を送っている。

新会長から、新社長、そして新副社長の挨拶が終わり、会場は今、歓談の声で溢れている。


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