イジワル副社長と秘密のロマンス
それもあってか、姉の孫である俺のことを夫婦は自分の孫のようにかわいがってくれているし、千花という子に対しても、それに近い感覚を持っているのかもしれない。
「樹君! お茶を入れるから、下に降りて来なさーい!」
今度は階段下のあたりから室内を通って、朝子さんの声が聞こえてきた。
「えっ……俺も?」
他人事のように庭の様子を観察していた。自分とは無関係な光景だと思っていたから、声をかけられたことに驚いてしまった。
正直、喉は乾いてない。小腹も空いてない。
椅子に座って、話を聞き流しながら、ただぼんやり過ごすよりは、この部屋にとどまって、まだまだ残っている夏休みの宿題を終わらせることに躍起になった方が良い。時間を有意義に使いたい。
断りの文言を捻りだそうと頭を回転させ始めたその時、窓の下を行きすぎようとしていた彼女と目が合った。
互いの動きが止まる。目があったまま、長い三秒が経ち――、彼女がにこりと俺に笑いかけてきた。
戻ってきたユメが、先を促すかのように、また彼女にまとわりつく。
彼女は視線を落とし、俺の視界から消えていった。
気が付けば、俺は呼吸まで止めていたらしい。息苦しさに耐えきれなくなり、深く息を吐き出した。