イジワル副社長と秘密のロマンス
ぺたりと身を伏せて、くつろぎモードへと移行していく。大人しく待っててよとユメの頭を撫でてから、俺も階段へと向かう。
階段下に到着すると、踊り場部分へと辿りついていた彼女が踵を返した。
俺を見降ろし笑みを浮かべた瞬間、上から降りてきた中年の男性が、トンッと、彼女の肩にぶつかった。
嫌な予感に足が動いた。すぐに俺は階段を駆け昇る。
階段の縁に立っていた彼女が、ぐらりとバランスを崩した。
「千花!」
こちらに向かって傾いた彼女へと――、千花へと、俺は思い切り手を伸ばした。
落ちてきた身体を受け止めることは出来たけど、勢いを殺すことはできなかった。堪えきれず、足が段差を滑り落ちていく。ふたり一緒に階段を落ちていく。
「いててっ……ごっ、ごめん! 樹くん大丈夫!? 樹くん!!」
俺の身体の上で身を起こした千花が、泣きそうな声で俺の名前を連呼する。
「大丈夫。平気だから、とりあえず降りて。重い」
「わっ、ごめん!」
慌てて、彼女が俺の上から飛び退いた。その機敏さから、彼女は怪我をしていないと判断し、少しホッとする。
「大丈夫ですか。すみません」と、階段を降りてきた男性が俺たちに謝ってくる。「平気です」と俺は同じ言葉を繰り返した。