イジワル副社長と秘密のロマンス
「これからは遠慮しないで来て」
柔らかな温かさが首筋を掠め、ぴくりと体が反応する。
「それとも、わざわざ来るの面倒くさい?」
彼の唇が、首筋から耳元へと昇ってくる。
「だったら、一緒に住む?」
ねだる様に囁きかけてきた声も、私を見つめる瞳も、甘い熱を帯びている。
「同棲しようか」
彼が提案してくれたこと。そして、いつかそうなるといいなと思い描いていた日々が、もしかしたら近いうちに実現するかもしれないということ。
心と身体。どちらの距離もまた少し近づいた気がした。嬉しくて、言葉が出なくなってしまう。
胸がいっぱいで涙ぐんでしまった私の頬に、樹君の指先が触れた。彼の表情がわずかに柔らかくなった。
見つめ合い、微笑み合い……数秒後、急に樹君の眉根が不機嫌そうに動いた。
「なんか用?」
鋭く突きさすように、樹君が視線を移動する。
「見世物じゃないんだけど」
言われて私も、彼の視線を追いかけた。
閉められたはずの副社長室の扉がわずかに開いて、その隙間から誰かが室内を覗いている。
小さく悲鳴を上げ、樹君の腕の中から出ようとしたけれど、私の腰に回された樹君の腕を、解くことは出来なかった。