イジワル副社長と秘密のロマンス
樹君はもう一度津口さんを見た。顎に手をあて、わずかに目を細めている。頭の中で議論を交わしている、そんな顔だ。
彼が見ているのがドレスだということは明らかだった。
褒めたのも、ウェディングドレスを着ている津口さんというよりは、ドレスそのものにだったようである。
副社長として何をしにこの場に来ているか、それを踏まえて考えれば分かったはずなのに、焼きもちをやいてしまった自分がだんだんと恥ずかしく思えてくる。
大きく息を吸い込んで、私は気持ちと表情を引き締めた。
「ちょっと待ってよ、樹! 感想はドレスだけ? 私は!?」
津口さんに腕を掴まれそうになった瞬間、樹君はさらりとした身のこなしでその手を避けた。
そして津口さんのドレス姿に改めて視線を走らせてから、顔色一つ変えずに感想を述べた。
「津口?…………特に、なんとも」
あっさりとした返事に、津口さんが頬を膨らませた。すぐさま両手を握りしめ、樹君に抗議する。
「ほんとひどい男ね! ちょっとくらい褒めてくれたって、いいじゃない!」
「綺麗だと思えばそう言う。けど俺、嘘つけないから」
「樹っ!」
社長と吉原さんは、苦笑いを浮かべながらそんなふたりのやり取りを見つめている。