イジワル副社長と秘密のロマンス
最初こそ殺伐とした空気が漂っていた。
けれど、自分のペースを崩さぬ樹君と、それに巻き込まれつつも必死に自分を褒めさせようとする津口さんの姿が、だんだんと場を和ませていった。
みんなが笑みを浮かべ出すなか、私だけ見ていられなくなっていく。視線を足元へと落とした。
周りのモデルたちも、最初は樹君に相手にされていないと津口さんのことを笑っていたけど、だんだんとお似合いだよねと口にし始める。
私もそう思ってしまった。
悔しいし、悲しいけど、向かい合って立っているふたりを見ているうちに、お似合いだなと思わされてしまったのだ。
誰もが認める美男美女。その言葉が二人にはぴったりだった。
カリスマ性のオーラを持つ樹君の隣に立っているというのに、津口さんは負けていなかった。
霞むどころか、樹君がいることにより、さらに華やかさが増した気がした。
私ではそうなれないと、本能的に悟ってしまった。
自分では物足りないのだという現実を突きつけられた気がした。
「相変わらずだなぁ。ほんとふたりは絵になるね」
突然、拍手が響いた。聞き覚えのない男性の声に続いて、樹君が小さく呻いた声も聞こえてきた。
セットの椅子に腰かけていた男性が立ち上がった。
「絶対にお前とが良いって可菜美が言い張るだけあるね。藤城さぁ、今すぐモーニング着て撮影に参加しちゃって」