イジワル副社長と秘密のロマンス
「わっ、私も。これ以上はだめ。お願い」
キスを続けたら、たぶん我慢できなくなってしまう。夜まで待てなくて、社のどこかで抱いて欲しいと樹君にねだってしまいそうな気がした。
切なく訴えかけると、樹君は私を抱き寄せていた腕の力を抜いた。薄く笑みを浮かべながら、額に軽くキスを落としてくる。
「あのさ……同棲始める前に、言っておきたいことがあるんだけど」
「言っておきたいこと?」
「そう。大切なこと。近いうちに、ウサギとネコ、持ってきてくれる?」
ウサギとネコ。一瞬で頭から血の気が引いていく。
「千花?」
「わ、わ、わかった。持ってくる」
はははと乾いた笑い声が出てしまう。
“言っておきたいこと”とは何なのか。
ものすごく気になるけれど、それを知るにはあのぬいぐるみたちを白濱副社長から速やかに奪い返さなくちゃいけない。
高難易度のミッションを突き付けられ、目の前がくらくらした。
「どうかしたの?」
怪しむように目を細め、樹君が私を見ている。冷静を装いたいのに、口角が引きつっていく。
「千花?」
彼が少し強めに私を呼んだ瞬間、コンコンとドアがノックされた。「樹、入るぞ」と社長に声をかけられるよりも先に、樹君の手が完全に私を開放する。