イジワル副社長と秘密のロマンス

秘書の顔で樹君に物申していると、突然、顎を掴まれた。視線の先にある瞳がすっと細められた。


「へぇ、そうくるんだ。いったい俺にどんなやましいこと隠してるの?」

「か、かくしごとなんて、そんなのなにも……」


気まずさと嘘をつく罪悪感。目と目を合わせていられなくなり顔をそらしたけど、すぐに顎を引かれてしまった。彼と見つめ合うことを余儀なくされる。


「顔に出てるから。誤魔化しても無駄」


そこまで言われてしまっても、打ち明けることはできなかった。

持って行かれたとは言っても、そこに私の落ち度が全くなかったとは言えない。

大切なものなのだから、バッグにしまうなり、手に持って席を離れるなりしていれば、こんなことにならなかったかもしれないのだ。

思い返すたび、後悔が募っていく。

あのぬいぐるみには、樹君の思いがたくさん詰まっている。

打ち明けて、自分の気持ちをないがしろにされたと樹君に不快に思われてしまったら、呆れられてしまったら、怒られてしまったら……嫌われてしまったら。

身を捩りながら、私は樹君の手を両手で掴んだ。

この手が私から離れていってしまったら。考えただけで、怖くなる。

きゅっと力を入れてから、彼の手を押し返した。無理やり笑みを浮かべる。


「と、とにかく! 時間がないので、急いで行ってきます! 失礼します!」



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