イジワル副社長と秘密のロマンス
樹君に指をさされ、私はすぐさま姿勢を正した。
「私、行けます!」
「頼んじゃっても良いの?」
「はい! 大丈夫です!」
「お言葉に甘えて。樹、三枝さん借りるよ」
「どうぞ」
薄く笑みを浮かべている樹君を横目で見ながら、私は社長に歩み寄る。人数、それからどの和菓子が良いかなど話をしていると、樹君がぽつりと呟いた。
「お使い。俺も一緒に行こうかな」
思わず動きが止まる。彼と一緒に行けば、さっきの自分の態度について追及されるだろうことは簡単に予想がつく。
振り向いてしまいそうになるのを何とか堪え、私は社長と話を続ける。
聞こえなかったふりをして、この場をやり過ごそうとしたけれど、やっぱり彼は甘くなかった。
「俺も一緒に行くって言ってるでしょ」
社長と私の間に割りこむ形で、樹君が視界に入ってきた。腕を組み、不機嫌な顔で私を見ている。
けれど、ここで怯んじゃいけない。平常心で乗り切らなくては。
「これくらい私ひとりで事足りますし、余計なお時間を使わせるわけにはいきません。副社長はここに残って仕事の続きをしてください。津口さんがお見えになったので、仕事の途中で手を止めてしまっていま……うっ!」