イジワル副社長と秘密のロマンス
帰国期間はほんの数日。しかもそのほとんどを祖母と行動を共にすることになるのだけれど、それは俺にとって、千花のことを知れる貴重な時間にもなった。
祖母が俺を、昴じいさんのところにも連れて行ってくれたからだ。
本人は単に、俺を行きつけのバーに連れて行き、酒を飲みたかっただけだけど、その席には昴じいさんも同席するため、こっそりと千花のことを聞くことが出来たのだ。
そうは言っても、高校二年の夏あたりから、千花も牧田家を訪ねなくなってしまったらしく、昴じいさんも彼女の現状について詳しいことは分からなかった。
彼女が近場で進学したことや、就職を機に家を出てしまったこと、まだ結婚はしていないこと。噂話程度のことだったとしても、俺にとっては嬉しい情報だった。
そして三年後……、俺は祖母に帰国を命じられ、日本に戻ってきた。
「樹もいるし、私も自腹でこっちのホテルに泊まっちゃおうかな」
一足に先にエレベーターを降りた津口が、俺を振り返り見て、にやりと笑った。
「宿泊先決まってるんでしょ? わざわざ変える必要ないよね。早くマネージャーに電話して、迎えに来てもらいなよ」
「絶対嫌よ。今はプライベートの時間だもん。樹と一緒にいる」