イジワル副社長と秘密のロマンス
一つ息を吐き出して、お兄さんが場の空気を変える。挑むような眼差しを樹君に向けた。
「うちは社内恋愛禁止ではないけれど、俺たちはそうも言ってられないだろ? 背負ってる重みが違うんだ。さっきみたいにいちゃいちゃして、彼女にうつつを抜かしているようではだめだ。しかも秘書とは四六時中一緒にいるんだ。ずっとあんな調子で……」
私たちのさっきの光景を思い出してしまったらしく、お兄さんは顔をしかめた。
樹君はお兄さんのそんな表情に怯むことなく、厳しく言い返す。
「仕事中にそんなことするわけないでしょ? 逆に俺は必死になるけどね。彼女が傍にいるからこそ、男として格好悪いところなんか絶対見せられないから」
仕事中というワードを、樹君は強調している。さっきも、休憩中と言って私を抱きしめてきた。
彼の中では、“仕事中はしないけど、休憩中なら話は別”ということになっているのかもしれない。
「やっぱり彼女を秘書から外してもらった方が良いんじゃないか? ほかの社員の手前――……」
「ちょっと待ってください!」
ずっと黙っていたけれど、秘書から外されると思った瞬間、私は大きく声を上げた。