宛先は天国ですか?
それからチラッとわたしの鞄を見ると、ニコッと微笑んでみせる。
「暖々さ、入学式の翌日とか始業式の翌日とか文化祭の翌日とか、大切な日の次の日に手紙を持ってきてるじゃん?
あたし、入学式の翌日にたまたま見つけちゃってさ。
宛先は知らないんだけど、さぞ大切な人なんだろうなって思って」
先週も持ってたでしょう?と首を傾げた璃子に、ドキッとした。
…確かに、大切な人ではあるのだけれど。
手紙について知られていたことに驚いたけれど、宛先は知られてないみたいでホッとした。
…“天国のお母さんとお父さん”だなんて、知られたらなんて言われるか。
璃子から目をそらすと、ニヤニヤしながらわたしを見ている環奈ちゃんが目に入った。
「その手紙の人が暖々ちゃんの好きな人で、明日会うと」
青春ですなぁと璃子に共感を求める環奈ちゃん。
璃子も環奈ちゃんと同じようにニヤニヤとしている。
「だからもう、そんなんじゃないってば」
ムッとすると、璃子がふっと笑う。
「でも、会うのはその人でしょう?」