肉食系御曹司の餌食になりました
外に出ると紺碧の空に星が瞬いていた。
頬を撫でる涼しい風に、乱された心も幾らか落ち着きを取り戻す。
なんの気まぐれか分からないが、食事が済めばきっと帰してもらえる。
上司である彼には気を遣うけれど、深夜残業するより遥かに楽だと言い聞かせ、夜道を並んで歩いた。
「五分ほど歩いた場所に、美味しい焼肉屋があるんですよ。そこにしませんか?」
焼肉か……。そういえばコンビニでも、肉がメインのボリュームのあるものばかり選んでいたような。
フランス料理や高級な寿司屋を選びそうな見た目なのに、ガッツリ肉食なのは意外だ。
それでいて締まった体型を維持しているのは、ジムにでも通っているからなのか……。
見えてきた焼肉屋は寿々園という店で、私も三度ほど事業部の打ち上げ等で来たことのある店だった。
確かにこの店は美味しい。
でも若干、料金設定が高めだし、智恵と女ふたりで焼肉屋という選択肢はなく、カイトと付き合っていたときは会社に近い店は避けるという理由で、来店の機会がほとんどなかった。
支社長が紳士的に開けてくれた扉から一歩踏み入ると、夕食時はとっくに過ぎているというのに、中々の盛況振りだ。
肉の焼ける音と匂いが私の食欲を刺激して、喉をコクリと鳴らしてしまう。