サヨナラの行方
9th*キミの歩幅で歩けない―和泉課長side―
『和泉くん、仕事が終わったら社長室まで来てくれ』
そう社長から言われたのは、あの女に離婚を伝えた次の日の午後だった。
社長からだったけど、たぶん常務もいて離婚の話しだろう。
こういう時は、行動が早いな。
理由が分かっていたけど、逆らわずに社長の言葉に従った。
何をどう言われるのかは分からないけど、不思議と不安はない。
自分の気持ちに素直になったから。
「常務と社長と話してくる」
定時後、人がまばらになった頃を見計らって、池田にこそっと伝えた。
俺の方を見ずに、池田は頷いた。
池田も何の話しかは分かっているのだろう。
とにかく、自分の気持ちを伝えて分かってもらう。
常務に悪いことをしたとは思っているけど、これ以上一緒にいることは出来ない。
我慢の限界だから。