サヨナラの行方
9th*キミの歩幅で歩けない―和泉課長side―



『和泉くん、仕事が終わったら社長室まで来てくれ』



そう社長から言われたのは、あの女に離婚を伝えた次の日の午後だった。

社長からだったけど、たぶん常務もいて離婚の話しだろう。

こういう時は、行動が早いな。


理由が分かっていたけど、逆らわずに社長の言葉に従った。

何をどう言われるのかは分からないけど、不思議と不安はない。

自分の気持ちに素直になったから。



「常務と社長と話してくる」



定時後、人がまばらになった頃を見計らって、池田にこそっと伝えた。

俺の方を見ずに、池田は頷いた。

池田も何の話しかは分かっているのだろう。

とにかく、自分の気持ちを伝えて分かってもらう。

常務に悪いことをしたとは思っているけど、これ以上一緒にいることは出来ない。

我慢の限界だから。




< 128 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop