サヨナラの行方

なぜ、常務はあれを許したのだろう。

自分も同じ立場にいたはずなのに。



「私の父親も、実は会社を経営しています。代表なんです」


「え？」



社名を聞いてみると、ここより大きくて有名な会社だった。



「その父に、今回のことを話しました。そうしたら、やっぱり社長と常務がしたことはおかしいと。言い方は悪いですけど、会社の恥になりますので普通は内々に処分するだろうと。
なので、私も諦めがつきました」


「でも、何でこの会社に？そのまま自分とこの会社に就職すれば良かったんじゃ……」


「何事も経験です。最初から自分のとこに入ってしまえば、そこしか知らないことになります。それじゃあ、上に立つ者として意味がありません。なので、最初は他のところで経験を積むということでした。
まぁ、上に立つのは私の結婚相手ですけどね」


「池田の相手は大変だな。
ここ辞めて戻るのか？」