サヨナラの行方
「戻ります。父にはそうしろと言われているので。
実際、退職届は出しているんですけどね」
「は?」
池田の言葉には驚いた。
今こうして話しをするのだから、これから出すのだと思っていた。
やることが早い。
「でも、許可が出ないんです。
悠月を辞めさせた手前、これ以上減らしたくないんでしょうね。聞くところによると、他にも何人か辞めたい人がいるみたいですし」
「一気に辞めると、会社の信用にも関わるもんな。
でも、彼氏はどうするんだ?人事部にいたよな?」
「別れませんよ。今後どうするかは彼次第ですけどね」
そう言って、池田はにっこり笑った。
彼次第とか言いながら、もう決めているかの表情だ。
おそらく、彼も辞めて池田と一緒に行くのだろう。