サヨナラの行方
聞き間違いではなかった。
間違いなく今俺の目の前にいるのは、死んだと聞いたはずの悠月だった。
だけど、なぜ目の前にいるんだ。
池田は死んだと言っていた。
ここに行くとまで言い出した俺に、そんな嘘はつかないはずだ。
じゃあ、なぜ。
「……っ」
混乱している俺を振り切るように、悠月は立ち去ろうとした。
「待って!」
何がなんだか分からない状況だけど、とっさに駆け出して腕を引いて止めた。
その腕は、まぎれもなく生きている人間だった。
幻ではなかった。
立ち去ろうとした悠月だけど、腕を振り払って無理やり逃げようとはしなかった。
でも、微かに震えている。