不器用男子に溺愛されて

 理久くんとの関係を何とかしたい。だけど、したくない。そんな風に何度も繰り返し同じことを考えていたある日、私は上司に呼び出しをくらってしまった。

「小畑、この確定見積書の金額見てみろ」

 ああ、また怒られてしまう。そう予測はしていたし、少しの覚悟もした。そんな私に上司である佐伯(サエキ)さんが見せてきたのは、私が昨日作成した確定見積書だった。

「……あっ、桁が」

 私に向けられている確定見積書。それに顔を近づけて見てみると、金額の桁が一つ多いことに気がついた。

「そうだ。ゼロがひとつ多い。小畑、お前な、俺がこのまま上に提出してたらとんでもないことになってたぞ」

「……は、はい。すみません」

「桁が一つ多い。これは、誰にでも起こりうる凡ミスだ。だけど、チェックをしっかり、欠かさずにしていれば防げるミスだからな」

「はい……すみません。申し訳ございませんでした」

 深く頭を下げ、震えてしまう唇を噛み締めた。

 自分のミスで上司に怒られてしまう。そのくらいのことで泣きそうになってしまう私のメンタルは弱い方だと思う。

 単にメンタルが弱く、子供だということも理由だとは思うけれど、他の派遣の子や社員の子はできているのに、私だけできておらずいつもこうして怒られるのが悔しい。それも理由のひとつだった。

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