不器用男子に溺愛されて

「小畑、顔上げろ。そうやって謝ってほしい訳じゃない」

 私は、ゆっくりと顔を上げた。すると、佐伯さんは「泣きそうになってる」と言って申し訳なさそうに笑った。

「あのな、小畑」

「はい」

「正直、お前は作業のミスが多い。作業も覚えるのに誰より時間がかかる。だけどな、作業を覚えることができればもうミスは起こさなくなるし、誰よりも早く作業を終えられるようになる。そして、誰よりも努力家だ」

 最初、ぐさりと刺されるように痛みを伴った胸。だけど、その痛みは既になくなっていた。

「小畑は派遣だから、うちで正規雇用するとなるとそれなりの成績や実績、評判が必要になってくる。だから、頑張って欲しいと俺は思ってる」

「佐伯さん」

「厳しい事も言われると思うけど、もし正社員になる気があるなら、それを乗り越えていってもらえたら嬉しいと思う。まあ、もしキツくなったら堀川にでも相談してみろ。お前ら付き合ってんだろ?」

 最後に優しく笑いかけてくれた佐伯さんに、私の胸はすごく温かくなった。嬉しくて、心強くて、私は大きく笑顔で頷いてみせた。

「佐伯さん、ありがとうございます」

「ああ。こんなの、何てことでもない。それじゃあ、早速確定見積書の再発行よろしくな」

「はいっ!」

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