不器用男子に溺愛されて
私たち派遣社員が同じ派遣先で働き続けられるのは、最長三年まで。あと一年が経ち、この会社から正規雇用の誘いがなければ、私は違う派遣先に派遣される。もしくは、就活をし直すなりしなければならない。
正直なところ、これは私も悩んでいた。私は、この会社が好きだ。よく注意されることはあるけれど、それでも、この会社に少しでも貢献できるようになりたい。それに、理久くんともずっと一緒にいたいのだ。
その為に、私はこの会社に正規雇用されるよう頑張るしかない。
「……よし」
小さくそう呟いた私は、制服のシャツを少しだけ捲り上げた。そして、パソコンと向き合い確定見積書の再発行を始めた。
再発行を終えた私は、いつもよりも俄然気合が入っていた。定時を過ぎ、オフィス内の人が減り続けても他の事務作業をしたり、エクセルの使い方を試行錯誤して勉強したりしていた。
気がつけば、定時の18時を2時間も過ぎようとしていた。
「もうこんな時間だったんだ」
オフィスの電気は半分消されていて、いつも明るく騒がしいオフィスには、もう物音ひとつしていなかった。
部屋も暗く、外も暗い。聞こえるのは、時計の針の音だけ。そんな状況に急に怖くなってきた私は、急いでカバンに荷物を詰め込んだ。