不器用男子に溺愛されて

 まさか、理久くんの口から『座ったら』なんて言葉が出てくるとはこれっぽっちも思っていなかった私は、嬉しさのあまり口角が上がりっぱなしだった。

 私は、下がってくれない口角をそのままにお弁当を包んでいるナプキンを解き、お弁当の蓋を開けた。

 お母さんの作ってくれたお弁当を見ながら、何となく、向かいから視線を感じるなぁ、なんて思っていたその時。

「何か良いことでもあったの」

「えっ?」

 私の感じていた視線とやらは、本当に理久くんから私に向けられていたようで、テーブルの上にあるお弁当から少し視線を上げれば、そこには私をまじまじと見ている理久くんがいた。

 カレーを食べ終わったらしく、頬杖をつきながらただ私を見ていた理久くん。理久くんと合う目に私の顔はだんだんと熱くなり、耐えきれず私は目を逸らしてしまった。

「ずっと笑ってるから。何か良いことあったのかと思って」

 お弁当の中身が映る視界に、頭上からは理久くんの声が聞こえる。

「良いことばっかり。昨日の事もそうだし、今、こうして一緒にご飯食べられるのも嬉しくて……だから、口角が下がらないんだもん」

 理久くんとよりを戻すことができて、あんな風に、仲直りのあとで初めてのキスもした。それからのコレだ。理久くんが私にたくさん話しかけてくれて、たくさん目と目を見て話して。私、こんなに幸せでいいのだろうか。

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