不器用男子に溺愛されて
両手を頬に当て、私は頬をぐっと下に落とした。口角が下がるよう願いながらマッサージをするかの如く頬を下へ下へと下げる。
「今日は家来るの」
しばらくマッサージをした後、お弁当を食べ始めた私に理久くんが問いかけた。私は、卵焼きを頬張りながら大きく首を縦に振った。
「うん!行く!」
卵焼きを飲み込んだ後、慌てて言葉で返事をする。すると、理久くんは少しだけ笑って「了解」と返してくれた。
理久くんが笑ってくれる。それだけで私の口角はまたすぐに上がっていき、次第に口角だけではなく目尻まで下がってきた。
私は、その下がる目尻と上がる口角を元に戻すことができないまま、この時間が長く続いて欲しい。でも、仕事を終えて理久くんと二人の時間を過ごしたいとも思いながらお弁当を食べ進めた。