不器用男子に溺愛されて
「堀川さん、みや子意外に女がいるとか聞いてないわよね?」
「え? なにそれ、堀川が浮気してるってこと?」
あり得ないでしょ、と言って目を丸くする森田さん。驚く森田さんに咲ちゃんは「まだ確定じゃないわよ。疑惑が浮上してるの」と言うと腕を組むと、唸り始めた。
「疑惑?」
「さっき、会社の前に堀川さんが一人でいたのよ。そこに長い黒髪のスタイルの良い女が来てね、二人で歩いて行くから後をつけたら、堀川さんの家に入って行ったの」
「長い黒髪でスタイルの良い女……?」
腕を組み、辺りをうろうろ円を描くように歩き続ける咲ちゃん。そんな咲ちゃんの一言を聞いて、眉間にしわを寄せた森田さん。
「なに⁉︎ 心当たりでもあるの?」
「え、あ、いや……」
「何⁉︎ 言いなさいよ!」
また森田さんへと詰め寄る咲ちゃん。その咲ちゃんから後ずさるようにしながら森田さんが渋々口を開く。
「も、元カノ……かな? と、思ったんだけど……どうだろう」
森田さんが苦笑いを浮かべる。
私の胸は、森田さんの一言に、まるで鋭い何かでも刺さったかのように痛んだ。
「堀川さんの元カノ?」
「そう。咲ちゃんたちが入ってくる前にこの会社にいたんだけど……」
分かっている。分かっている。
あんなに格好良くて優しい理久くんのことだ。今までにも恋人の一人や二人くらいいたに決まっている。いないなんてあり得ないほどに格好良いんだもん。
だけど、分かっているのに……分かっていたはずなのに、なんか、こう、胸の奥がモヤモヤとする。